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児童相談所は親が否認しても医師の専門的判断に従い一時保護を実施せよ

児童相談所は親が否認しても医師の専門的判断に従い一時保護を実施せよ
  本年(2013年)12月、愛知県豊橋市で、昨年8月に三女が、本年7月に次女が相次いで死亡し(次女・三女は双子)、父親により死に至らしめられたのではないかとして愛知県警察に父親が逮捕されました(逮捕事実は三女の傷害致死)。父親は殺害を否認していますので、事実関係の詳細は今後の捜査を待つことになりますが、現時点で判明していることを前提に述べることとします。
報道によると、事案の経緯は次の通りです。
2011. 2 次女、三女出生
2012. 2.11 次女、三女が風邪で入院
2.23 父親が一人で付添中次女が突然心肺停止、眼底出血
2.29 三女の顔にあざがあることを病院が発見し、次女を再検査し、眼底出血を発見。病院から児童相談所に通報
3.2 次女が頭蓋骨骨折と判明。硬膜下血腫と診断
3.7 児童相談所から警察に通報
3.10 警察から児童相談所に長女を含め3人の保護を要請児童相談所三女を一時保護せず、三女を退院させる
児童相談所が家庭訪問するも一時保護せず
7.13 三女、意識不明で入院 病院から児童相談所に通報児童相談所が長女を含め3人を一時保護
8.7 三女、病院で死亡病院が児童相談所に通報、児童相談所から警察に通報
2013. 7.29 次女死亡
12.6 父親を三女への傷害致死で逮捕

  昨年2月に次女、三女がともに入院し、入院中、父親が一人で病室で付き添っているときに次女が突然心肺停止し、その後、眼底出血が見られ、硬膜下血腫がみられました。
  ご承知のように、乳幼児の硬膜下血腫は、頭部を強打したり、頭部を強く揺さぶられることにより生じ、死に至る危険性の極めて高いものです。歩けない乳児が事故で硬膜下血腫となることは極めてまれであり、人為的に強く揺さぶるか、強打しなければ起こらない症状です。
  病院は児童相談所に虐待の疑いありと通報しました。警察も児童相談所に保護するよう要請しました。しかし、児童相談所は父親が否認したので虐待とは判断せず、入院していた三女を一時保護せず、そのまま退院させて自宅に戻してしまいました。
  通常、医師は、このような症状は強く揺さぶられたか、強打されたかの結果であり、虐待された疑いが濃い旨の説明をします。今回、豊橋児童相談所が父親が否認していることをもって、もう一人の子どもを保護しなかったことは大変な誤りを犯したことになります。
  一時保護するには、虐待の「確証」など必要ないのです。虐待の「疑い」で十分なのです。児童相談所は保護者の「有罪」を認定する組織ではありません。子どもが親から危害を加えられるおそれがあると判断すれば、一時保護する義務と権限を与えられた組織なのです。そして、虐待の「疑い」は専門的な知識を有する医師の指摘で十分なのです。医師がこの症状は頭部を強く揺さぶられた、あるいは強打された結果である疑いが強いと言えば、それで、虐待の「疑い」は十分認定され、一時保護しなければならないのです。児童相談所が父親が否認したから、一時保護しなかったというのは、医師の判断を軽視し、経験則にも反し、子どもの命をないがしろにしたとんでもない判断と言わざるを得ません。
  児童相談所のこのような対応―すなわち、医師の意見を無視し、保護者が否認すればその言いなりになり、子どもを保護しないという対応―は決して珍しいことではありません。平成20月には大阪府岬町で同様の対応をし、その後子どもが父親に殺害されるという事案が発生しています。保護者に強く出ることができないという児童相談所の体質は一向に変わりません。本来誰が見ても一時保護すべき事案において、保護者に拒否されて一時保護せず、子どもが無残に殺されたという事案は枚挙に暇がありません。
  読売新聞(2013年12月7日)によると、児童相談所のセンター長は「保護すれば家庭を分断させることもあり、判断が非常に難しい」などと発言していますが、症状からして虐待の疑いが高いという医師の専門的な判断より優先させるような事情では全くありません。児童相談所はいったい何人の子どもを見殺しにすれば、このような対応を改めるのでしょうか。早急に、国、あるいは自治体は、医師の専門的な判断があっても保護者が否認すれば「虐待の疑い」を否定して一時保護しないという児童相談所のとんでもない対応を直ちに改めさせなければなりません。
  そこで、児童相談所に、医師の専門的判断がある場合には保護者が否認している場合でも医師の判断を尊重して一時保護する、ということを児童相談所の法律あるいは条例上の義務とすることが必要です。
  このような対応は当たり前のことであり、本来は法律ないし条例で義務付けるほどのことかとお考えの方もいるかもしれませんが、児童相談所はこれまでも全国で「親との関係を考慮した」とか「家庭再統合の妨げになる」とか「親が虐待を否認している」などの理由で、かかる対応を繰り返し続け、死に至らしめられることを含め多くの子どもが保護されないまま放置されていることが続いているのです。
  ですから、法律ないしは条例で義務付けることにより、ようやく、児童相談所のかかる対応により子どもの命が奪われるということがなくなることが期待できるのです。このままでは、今回の幼い双子が死に至らしめられたという悲劇は何の教訓を生むこともなく、あいかわらず多くの子どもが児童相談所に保護されないままになってしまうのです。そこで、上記のように取り組むことを法律ないしは条例で義務付けることが必要です。
  シンクキッズのホームページで公表していますが、児童相談所の一時保護の判断基準として、

(子どもの一時保護等の基準)
1児童相談所は、一時保護、施設入所解除の判断に当たっては、子どもの安全を最優先とし、保護者との良好な関係の維持、家族再統合の必要性を名目に、保護者に子どもを引き渡すことのないようにしなければならない。
2子どもの母親と同居する父親以外の男がいる場合には、原則として一時保護措置を講ずるものとする。一時保護しない場合には、その理由とともに知事に報告するものとする。
3 児童相談所は、親が虐待を否認している場合であっても、子どものけがや衰弱の状態から虐待が疑われるとの見解を医師等の専門的知識を有する者から受けた場合には、原則としてその見解に従わなければならない。医師等の見解に従うことができないと判断する場合には、その理由書を知事に提出し、その同意を得なければならない。


という規定を設けることが必要と考えています。
  まず1項で、児童相談所は、子どもの安全を最優先とし、保護者との良好な関係の維持、家族再統合の必要性を名目に、保護者に子どもを引き渡すことのないようにしなければならない旨を規定し、さらに、3項で、親が虐待を否認している場合であっても、子どものけがや衰弱の状態から虐待が疑われるとの見解を医師等の専門的知識を有する者から受けた場合には、原則としてその見解に従わなければならない旨を規定するものです(なお、実母のほか父親以外の同居人がいる場合にも虐待死させられる危険が高いことからその場合の判断基準が必要と考え、2項を規定しています)。

  このような規定を設けることにより、児童相談所も「親との関係を考慮した」とか「家庭再統合の妨げになる」とか「親が虐待を否認している」などの本来子どもの安全を犠牲にしてまで優先すべきでない理由で、保護者の言いなりになることなく、子どもの命を守る方向で、一時保護を積極的に実施することができるものと考えます。
  法律での整備はいつになるか分かりませんので、是非、愛知県で条例を制定していただくよう強く要望するものです。
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