このサイトは、警察庁に23年間勤めた弁護士による、コンプライアンス、リスク管理、反社会的勢力対策などの企業法務と犯罪被害者問題、児童ポルノ問題など放置されている様々な社会問題について発信するサイトです。


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東洋経済暴力団条例の解説

Q1 暴力団排除条例とはなんですか。またその目的は何ですか。
暴力団排除条例は、暴力団が経済取引や事業活動に介入し、資金を獲得し、その過程で不当な要求等を行うなどして正常な経済活動に悪影響を及ぼしている現状にあることに鑑み、暴力団の経済取引や事業活動からの排除を促進することを主たる目的として制定されたものです。企業等の事業者や地方自治体の公共事業等から暴力団を排除することに最大の目的が置かれています。従来の警察対暴力団という構図から、社会対暴力団という構図に変えたものといえるでしょう。

Q2 規制の対象となる「暴力団関係者」の定義を教えてください。
都条例第18条において、事業者が取引関係から排除すべき対象として「暴力団関係者」と定められています。都が公共工事等から排除するべき者も同じく「暴力団関係者」とされています(第7条)。
「暴力団関係者」とは、「暴力団、暴力団員と密接な関係を有する者」のことをいうとされていますが、より具体的には、
①    暴力団が経営を支配している企業
②    暴力団が経営に実質的に関与している企業
③    暴力団を利用している企業や個人
④    暴力団に資金提供・便宜供与している企業や個人
⑤    暴力団と社会的に非難される関係を有する企業や個人
と捉えることが適当です。

Q3 「利益供与の禁止」規定とは何ですか。
都条例では、事業者が暴力団関係者等に
①    暴力団の威力を示すなどしてトラブルの解決その他を依頼するなどし利益を供与する行為(24条1項)
②    暴力団の活動を助長し、又は暴力団の運営に資することとなることの情を知って、利益を供与する行為(以下「助長取引」といいます。)(24条3項)
を禁止しています(利益供与の禁止)。
①    は暴力団員に対価を支払い「あいつを締め上げて貸した金を取り戻してく
れ」と頼むような行為です。②は暴力団の活動を助長し又は暴力団の運営に資することとなる取引をそのようになることを知って行う行為です。組の行事のために宴会場を貸す、みかじめ料を支払うなどが当たるとされています。
なお、利益供与とは「金品その他の財産上の利益を供与すること」をいいます。贈与の場合や名目的な対価の支払いの場合がこれに当たることはもちろんですが、相当な対価の支払いを受けて販売する場合もこれに当たる場合があると解されています。

Q4  暴力団関係者等に対する「助長取引」とはいかなるものを指しますか。
都条例24条3項に該当する行為を「助長取引」といいます。助長取引に当たるものとしては、暴力団関係者等に対する資金の提供や融資、相当の対価の支払いのない取引があげられます。これらの取引は暴力団員等に明らかに利益を提供するものだからです。みかじめ料の提供など被害者的な立場であっても「助長取引」に当たる場合があるとされています。
暴力団関係者等が相当の対価を支払う場合でも「助長取引」に当たる場合があるとされています。これまで、
○組事務所の内装工事を請け負った内装業者
○暴力団の行事に場所を貸した飲食店経営者
に対して、警察から利益供与禁止規定に当たるとして勧告がなされています。

Q5 利益供与禁止規定に違反するとどうなりますか。
事業者が利益供与禁止規定(都条例24条1項、3項)に違反した場合には、公安委員会から勧告がなされ(27条)、事業者が正当な理由なく勧告に従わなかった場合には公表(29条)されることとなります。さらに24条1項違反の場合には公表されたにもかかわらずその後同様の行為をした場合には命令が出され(30条)、その命令にも従わない場合には罰則が課せられることとされています(33条)。
ただし、24条3項違反の場合には、勧告の実施前に、公安委員会に対し当該行為に係る事実の報告をし、将来にわたり違反する行為を行わない旨の書面を提出した場合には、勧告は行わないとされています(28条)。

Q6 これまでの「勧告」の例を教えてください

2011年には、
・事業所の敷地内に暴力団の車3台を無償で駐車させていた事例(愛知)
・暴力団の慶弔行事に宴会場を提供した事例(神奈川)
・暴力団が飲食店数十店に貸し出していた観葉植物の交換などの業務を代行していた事例(東京)
などに勧告が出されています。

Q7 暴力団の宴会を受注することは条例違反となるのでしょうか。暴力団員が数人で食事に来るのを断らなければいけないのですか。
これまで、暴力団の行事に場所を提供したとして飲食業者に勧告が出された例があります(2011年6月神奈川)。
ただし、暴力団員同士の飲食のすべてが「助長取引」に当たるとはいえないことは明らかです。組の資金獲得を目的としているものや組としての行事ではない、個人的な飲食は当たらないと解するのが通常の解釈だと思います。
しかし、暴力団の利用を認めると他の客が怖がって来なくなる、事件に巻き込まれるなどの危険がありますので、条例違反となるかは別にして「暴力団お断り」の姿勢は堅持すべきでしょう。

Q8 相手が暴力団員か知らずに取引しても違反になるのですか。
相手が暴力団関係者等と知らずに、助長取引を行った場合には違反とはなりませんので、勧告もされません。
実際には、警察がそのような取引がなされたことを知った場合には、相手が暴力団関係者等であることの情報提供がなされることになると思います。情報提供を受けた後にも、同様の取引を行った場合には、勧告がなされることもあり得ます。

Q9 暴力団排除条項とはなんですか。都条例では暴力団排除条項を契約に規定することが義務付けられたのでしょうか。
暴力団排除条項とは、契約や取引約款等の中に暴力団等反社会的勢力が当該取引の相手方となることを拒絶する旨及び契約成立後あるいは取引開始後に相手方が暴力団等であることが判明した場合には契約を解除することができる旨を規定する条項のことをいいます。
都条例では(18条2項)、事業者に書面で契約を締結する際には暴力団排除条項を導入することを努力義務として規定しています。具体的には、契約書に契約締結後に相手方等が暴力団関係者であることが判明した場合には契約を解除することができる旨の解除に関する特約を導入するように求めるものです。

Q10 暴排条項に基づく解除に際し注意点を教えてください。
相手方が暴力団関係者であることの証明ができていないときは当然ながら暴排条項に基づく解除は認められません。警察からの情報提供等で明らかに暴力団関係者であることが証明できない場合には他の解除事由がない限り解除すべきではないでしょう。
また、住居等の賃貸借契約の場合には、解除が有効と認められるためには信頼関係の破壊が必要という判例理論がありますので、解除するには相手方が暴力団関係者であること以外にも信頼関係の破壊が認められる事由を数多く主張することが必要です。暴排条項以外の事由に基づく契約解除や契約無効、契約取消し等の主張も行うべきでしょう。

Q11 暴力団員だから取引を拒否するのは差別にはなりませんか。
私人間の契約には私的自治が認められ、誰が誰と契約しようが自由なのが原則です。したがって、事業者が暴力団員と契約したくないと思えばそれは自由ですし(契約自由の原則)、契約の中に暴力団排除条項を導入することも自由です。ただし、電気、水道、ガスなどについては法律上事業者に契約締結が強制されていますので、暴力団員であることだけで契約拒否はできません。また、住居の賃貸借契約等の継続的契約を解除するためには、信頼関係の破壊を必要とする判例理論がありますので、暴排条項を導入したからといって同項に基づく解除が常に認められるわけではありません。
このような例外はありますが、私人間の契約については契約自由の原則から、暴力団員と取引したくないという事業者や個人の意思は十分尊重されます。
市営住宅に暴力団員を入居させない旨定めた広島市の条例について、「暴力団構成員という地位は、暴力団を脱退すればなくなるものであって社会的身分といえず、暴力団のもたらす社会的害悪を考慮すると、暴力団構成員であることに基づいて不利益に取り扱うことは許されるというべきであるから、合理的な差別であって、憲法14条に違反するとはいえない。」(2009年5月29日広島高裁判決)としたものがあります。この判決は最高裁でも支持され確定しています。自信を持って暴力団排除を進めていけるのです。

Q12 相手方が暴力団員と分からない場合、どう対処すればいいですか。警察に聞けば教えてくれるのですか。
2011年12月22日に警察庁組織犯罪対策部長名で「暴力団排除等のための部外への情報提供について」が発出され、同通達では暴力団排除条例の上の義務履行の支援等の視点から可能な範囲で積極的かつ適切な情報提供を行うものとするとされています。
都条例では18条1項で一定の場合に契約の相手方が暴力団関係者でないことを確認する努力義務が課せられています。事業者がこの義務を果たすために、相手方が暴力団関係者でないことの確認を求めた場合には、警察から回答がなされることになります。その際、警察には、対象者の住所、氏名、生年月日等が分かる身分確認資料及び取引関係を裏付ける資料等の提出と提供された情報を他の目的に利用しない旨の誓約書の提出が求められます。

Q13 公共工事に参加するにはどんなことに気をつければいいですか。
国・地方公共団体の多くでは、公共工事から暴力団等を排除するための暴力団排除措置要綱を定めています。措置要綱では、公共契約から暴力団関係者を排除することを基本方針とし、契約締結後に暴力団関係者と判明した場合には契約を解除することとしています。また、公共工事を受注した業者に対して暴力団関係者から不当要求がなされた場合には警察等に通報する義務を課し、通報しなかった場合には指名停止とする等ペナルティを課しています。
したがって、公共工事を受注するためには、暴力団と一切の関係を持たないことが必要です。下請け契約を含めすべての契約の中に、暴排条項を導入することと怪しげな噂のある人物とは突き合わない、そのような人物とゴルフや宴会に参加しない、交際しない、従業員として雇わないことなどが必要です。また、不当要求があれば速やかに警察等に通報することが必要です。

Q14 暴力団と取引を止めたいのですが報復が怖くてできません。これまで暴力団の報復はなされていないのでしょうか。
残念ながらあります。2011年末現在、福岡県では大手ゼネコンや下請け企業、ゼネコンに対して建設工事を発注した複数の企業等に銃撃がなされ、死者やけが人がでています。犯人が検挙されていませんが、暴力団の犯行が強く疑われています。
暴力団関係企業との下請け契約などを解除する場合には報復される危険がありますので、警察に事前に連絡の上、警察による保護を求める必要があります。警視庁では暴力団の危害を受ける危険性のある企業関係者などを保護する身辺警戒員を大幅に増員し、必要な場合には24時間体制で警護するとしています。

なお、暴力団対策条例の解説その他の企業のとるべき暴力団対策に関する書籍を本年4月ころ出版する予定です。

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