このサイトは、警察庁に23年間勤めた弁護士による、コンプライアンス、リスク管理、反社会的勢力対策などの企業法務と犯罪被害者問題、児童ポルノ問題など放置されている様々な社会問題について発信するサイトです。


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反社排除に頑張る企業と警察-プリンスホテル勝訴判決と北九州銃撃事件

反社排除にがんばる企業と警察ープリンスホテル勝訴判決と北九州銃撃事件

1 平成22年4月13日、広島地裁で、グランドプリンスホテル広島が暴力団幹部の結婚披露宴の宴会契約を解除したことが有効と認められました。
 判決によると、幹部は2008年11月に暴力団員であることを明かさないまま、グランドプリンスホテル広島で09年2月に結婚披露宴を挙げる契約を締結しましたが、その後、警察からの通報で幹部が暴力団員であることが分かりました。そこで、同ホテルは、「ご結婚披露宴契約」の「暴力団員等が申し込み又は出席する場合は申し込みに応じない。成約後に判明した場合には直ちに断る」という条項に基づいて契約を解除しました。幹部は、契約の解除は違法であるとして損害賠償を求める訴訟を提起した、という事案です。
 ホテル側は、解除の正当性について、規約に基づく解除、錯誤等を主張しました。判決は、暴力団員がホテルで挙式することの問題点をあげた上で「当事者が暴力団員かどうかは、ホテル側にとって、挙式の契約をするかどうかを判断する上で重要な事項であり、これを知らなかったとすれば、単なる動機の錯誤に止まらず、要素の錯誤に該当すると解される。このことは、民法567条ないし570条(対価関係の均衡を欠く場合に解除を認める。)の法意等に照らしても、是認されるべきである。・・・よって、被告の錯誤の主張には、理由がある。そうすると、本件契約における被告側の意思表示が無効となるから、本件契約も無効となる。」と判示しました。
 本判決は同ホテルの反社会的勢力排除条項に基づく解除を認めたものではありませんが、錯誤の主張が認められる事情として反社会的勢力排除条項の存在が大きな理由であることは間違いないところです。本判決は、暴力団の義理かけ行事ではない宴会についても暴力団員の利用を認めないというホテル側の主張を認めたという事案であり、極めて大きな意義を有するものです。同ホテルが訴訟を起こされても毅然として対決姿勢を貫いて、勝訴を勝ち取ったことは、大いに他の企業の励みになると思います。さらに言えば、このような司法判断が出た以上、同様の事態に直面した企業は同ホテルと同様に毅然として排除することが求められることになったといえるでしょう。警察も本事案では、申込者が暴力団員であるという情報提供を行いその他様々な支援を行ったということで、企業の反社会的勢力排除に積極的に協力しているとみられ、この点は大いに評価できます。

2 一方、北九州市では、本年4月6日から7日かけて西部ガスにけん銃が撃ち込まれるという事件が発生していますが、本年4月8日付読売新聞によると、特定の大手ゼネコンに受注させないよう要求する内容の脅迫状が同社に届いていており、以前から当該ゼネコン関係先に対しては発砲事件が起きているとされています。暴力団が反社会的勢力排除に向けて取り組んでいる企業に対して取引先を巻き込んで凶悪かつ卑怯千万な手段で報復に出ているわけです。こうした事態を警察は一刻も早く解決しなければなりません。反社会的勢力排除に乗り出した企業を守ることができなければ、どの企業でも排除に乗り出せません。福岡県警察では総力を挙げて捜査していることと思いますので、早々に組織を壊滅させて解決することを期待していますが、もし、捜査が長期化し、あるいは未解決に終わり、最悪は人命が奪われるようなことに発展すれば、警察や政府がいくら反社会的勢力排除を企業に要請しても、企業はそう簡単に分かりましたとはいえないでしょう。
 そこで、警察・政府は、このような事態に対応するため、事前に、凶悪きわまりない暴力団の凶悪犯罪を防止するために有効な法制度を整備することが必要です。反社会的勢力排除に努めた企業が襲撃されても「捕まえることができませんでした」、ではすまないのです。現行法で無理なら新たな法制度を整備しなければなりません。たとえば、組織的に凶悪事件を繰り返し、このままでは住民や企業に対する生命や身体に対する危険が除去できないと判断される暴力団に対して、組織としての活動の禁止、具体的には事務所の使用禁止、特定の地域への立入り禁止、特定の人・施設への接近禁止その他の組織的に犯罪を行うことを未然に防止するために必要な規制を課することができるようにする、あるいは、それでも危害が防止できないと判断される場合には解散命令を出せることができるようにする、などが考えられます。規制は必要に応じ罰則で担保し時限的にすることも考慮すべきですが、いずれにせよ何らかの有効な法制度の整備が必要なことは間違いありません。かかる行為は組織的なテロ行為であり、人の生命が奪われてからでは遅いのです。
 警察・政府は、平成19年6月に「企業から反社会的勢力による被害を防止するための指針」を発出し、企業に対して反社会的勢力排除の取組を求めました。それに応じた企業を守れないで何もしないわけにすむはずはありません。速やかに、このような凶悪きわまりない暴力団を壊滅させるか、それができないのであればできるような法制度を整備するべきでしょう。特に福岡県では「福岡県暴力団排除条例」が制定され、平成22年4月から施行されていますが、同条例では事業者に対して暴力団員等に対する利益の供与の禁止等を義務付けました。他の府県でも同様の条例の整備が検討されていると聞いておりますが、このようなことを企業に求めるのであれば、なおのこと、がんばっている企業を守る、そして、現行法では守ることができないのであれば、がんばっている企業を襲う暴力団を壊滅するために有効な法制度を整備しなければならないと思います。

3 企業コンプライアンスの取組の浸透に伴い、反社会的勢力排除に頑張っている企業が多くなっていますが、それを支えるのは警察の積極的な情報提供であり、支援であり、保護であり、暴力団の壊滅に向けた取組みです。警察はこれまで以上にこれらの取組を強化しなければなりません。でなければ、企業は排除したくても排除できなくなってしまうのです。本問題に関する警察庁の前向きな取組を求めますが、警察庁が動かないようであれば、「政治主導」を掲げる民主党政権に対して、有効な法制度の整備を迅速に行うよう求めます。
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