このサイトは、警察庁に23年間勤めた弁護士による、コンプライアンス、リスク管理、反社会的勢力対策などの企業法務と犯罪被害者問題、児童ポルノ問題など放置されている様々な社会問題について発信するサイトです。


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大和都市管財事件大阪高裁判決とサブプライム問題

 平成20年9月26日、平成13年に経営破たんした大和都市管財による詐欺事件で、被害者が国に対して監督を怠ったとして損害賠償を求めた訴訟で、大阪高裁は約15億5880万円の支払いを命じる判決を言い渡しました。
 訴訟で最も争われたのは、平成9年12月に、大和都市管財が営んでいた抵当証券業の更新登録を近畿財務局が認めたことでした。報道によりますと、高裁判決は、大和都市管財は当時すでに債務超過に陥っており、本来更新拒絶しなければならなかったと判断したとされています。
 わたしは、平成13年4月1日に大阪府警察本部生活安全部長に着任し、着任後約2週間で、大和都市管財を出資法違反容疑で捜索を実施し、11月に詐欺罪で社長等を逮捕し、実態の解明に努めたという経験を有しています。
 当時から、被害者の方やマスコミから強制捜査以前に何とかならなかったのかという声が多く出されていましたが、高裁判決はそれを認めたものとなりました。国の監督規制権限を恣意的に行使せず違法と判断されたわけですが、かかる判決が出されたことで、金融庁は、今後ますます金融機関に対して業務改善命令、業務停止命令などの監督権限を積極的に行使することが予想されます。

  ところで、大和都市管財事件で問題となった金融商品は抵当証券ですが、これは債権流動化商品であり、サブプライム問題における住宅ローン債権と似たものだと思われます。大和都市管財は、財務基盤が低下しているにもかかわらず、一部担保価値の下がった抵当証券やその他の金融商品を売りつけて投資家に損害を蒙らせたとして社長が詐欺罪に問われ、さらに、監督官庁の権限不行使が違法とされたわけですが、サブプライム問題では同種の金融商品を売りつけた金融機関、監督官庁の責任はどうなるのでしょうか。
 アメリカなどの金融機関は、サブプライムローン債権あるいはさらにそれを複雑にした債権などリスクの高い(当初はリスクを分散するものだという触れ込みのようでしたが)商品を売りまくり、自らは巨額の利益、報酬を得ていました。彼らはリスク商品を正しく説明することなく世界にばらまいていたわけで、売りつけた先に損をさせ、倒産や経営危機に追い込み、金融システムを危機に陥らせ、公的資金の投入により救済されるという事態に至ったわけです。いうなれば、国民全体に損害を与えたということであります。
 大和都市管財事件とある意味似たような構図であり、いずれのケースも、リスクの高い金融商品を十分な説明をせず投資家に売りつけ損害を蒙らせ、自らは巨利を得ていたたわけですが、大和都市管財の経営者は詐欺罪に問われる一方で、アメリカの金融機関の経営者は公的資金の投入により国民全体に損害を蒙らせながら、今のところそれ自体で刑事責任を問われるようにはなっていません(個別の事案で刑事罰に触れる行為があれば問われることはありうるでしょうが。)。大和都市管財の事件では、購入者が損害を蒙るということを認識しながら販売を続けたということが詐欺とされたわけですが、サブプライムローンを売りまくった金融機関も同じような認識・認識可能性はあったのではないでしょうか。ところが、詐欺罪などの刑事責任の追及は、個人犯罪を念頭においており、こと細かな立証が求められ、こういうスケールの大きい事案では立証することははなはだ困難であります。
 同様の現象は、MSCB、MBOにも見られます。わたしは昨年の刑法学会で「企業の不正な活動とその責任の在り方」というテーマで講演させていただきましたが(刑法雑誌第47巻2号)、そこでは、MSBC、MBOの中には、多数の一般株主の犠牲の上に、経営者と特定の投資家(銀行・証券会社である場合もある)が巨額の利得を得るというものがあり、これらの実態は、経済的価値が多数の一般株主から経営者、特定の投資家に正当な理由なく移転させられているとみられるものであって、「他人の犠牲の上に巨額な利益を得る行為」であり、「一つ一つを見れば合法だが、全体としては違法」な行為であるといえると思う、と述べました。現行刑法の詐欺罪では立件することはまず無理なのですが、実態は、正当な理由なく経済的価値が移転させられている、というもので詐欺と同視しうると思います。しかし、これが放置されているのです。
 今回の事態でアメリカの金融機関の経営者、社員に見られるところの、リスクの高い商品を売りまくって高額の報酬を得、破たんすると国が公的資金を投入して救済し、自分は転職する、ということがまかりとおるのであれば、モラルハザードは決してなくならず、同じことが繰り返される危険はかなり高いと思われます。無責任なことをして他人に損害を蒙らせ自分は巨利を得る、という行為を防止するために必要な方策が求められています。
 大和都市管財事件とサブプライムローン問題をみるにつけ、個人の犯罪の責任追及に比して、法制度が整備されていない組織的な犯罪的行為と言えるような不法行為の責任追及について、刑事責任をそれほどの困難を伴わない程度の立証活動で追及できるような制度の創設が必要と感じる次第です。
以上
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