このサイトは、警察庁に23年間勤めた弁護士による、コンプライアンス、リスク管理、反社会的勢力対策などの企業法務と犯罪被害者問題、児童ポルノ問題など放置されている様々な社会問題について発信するサイトです。


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営業秘密保護強化の必要性-不正競争防止法の改正

 本年(平成20年)9月12日、経済産業省産業構造審議会知的財産政策部会技術情報の保護等の在り方に関する小委員会が、開催されました。わたしは、同小委員会の委員として審議に参加していますが、同小委員会では、不正競争防止法の営業秘密侵害罪の基本的な問題点、新しい構成要件の在り方、刑事手続きの在り方が審議されることとなっています。
 平成15年に不正競争防止法に刑事罰が導入されるなど、営業秘密の保護法制は進んではきています。しかし、同法違反(営業秘密の侵害罪)による起訴事例はいまだ一件もないのが実情です。その理由は、同法の構成要件が限定されすぎているからです。具体的には、同法では基本的には営業秘密を使用・開示した行為を禁止していますが、営業秘密の使用・開示行為を立件することは、相手方に協力者でもいない限り不可能です。また、取得行為の一部についても処罰対象とされていますが、「詐欺等行為又は管理侵害行為」により取得した場合に限定されており、対象範囲が狭すぎますし、微妙なケースでは適用が難しいものとなっています。
 たとえば、転職を考えている社員が転職先に売り込もうとして自分がアクセスを許可されているサーバに記録されている営業秘密にアクセスしてそれを自分の持ち他込んだハードディスクに出力して持ち出し、その後退職した場合には、立件できません。退職後に同様の行為を行えば、アクセス権限がないとして立件可能なのですが、当罰性は同じではないでしょうか。誰が考えても許せない行為は罰することとしなければ、モラルハザードが広がることにもなりかねません。
 また、現行法では、営業秘密侵害罪で起訴された場合、侵害された営業秘密の内容が法廷で明らかにされてしまうのではないかという危惧が企業にあります。刑事責任の追及のために、肝心の営業秘密が公開されてしまっては元も子もありません。そこで、刑事法廷での営業秘密の公開をしない措置が必要となっています。
 この点、昨年の刑事訴訟法改正で、性犯罪等の被害者の名誉・プライバシーを守るため、性犯罪等の被害者の氏名や住所などの被害者特定事項を法廷で公開しないことができることとされたことが参考になります(刑事訴訟法290条の2等)。改正された刑事訴訟法では、裁判所は、起訴状の朗読、尋問、陳述が被害者特定事項にわたるときはこれを制限することができ、被告人側に証拠を開示する場合にも被害者特定事項を明らかにしないことができることとされました。これまでは、性犯罪等の被害者は犯人の処罰を求める意思はあっても、法廷で自分がそのような犯罪に遭ったことが明らかにされてしまうことから、告訴を躊躇せざるを得ないなど甚だしい不正義が行われてきました。被告人の弁護士の中には、被害者に対して告訴した場合には法廷で性犯罪被害に遭ったときのことなどを根掘り葉掘りきくことになるなどと脅迫まがいのことを告げて、告訴を思いとどまらせるものさえ少なからずあるところです。被害者が裁判によりさらに傷つくというような制度を存続させていいわけがありません。
 営業秘密を侵害された被害企業にも同様のことがいえると思います。重大な営業秘密を侵害された企業が泣き寝入りを強いられ、侵害した加害者が高笑いするという事態を放置することは許されません。刑事裁判での営業秘密が秘匿される制度を講ずる必要があるところです。
 本小委員会での検討は始まったところですが、被害者が泣き寝いりし、加害者が高笑いするような制度の改善は早急に必要なものと考えます。
以上
後藤コンプライアンス法律事務所
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